マレーシアのムヒディン首相は4月23日、活動制限令の3回目の延長を発表しましたが、同29日からの「フェーズ4」では操業許可を付与した企業のフル稼働を認めました。
都市部は比較的リモートワークへ切り替えやすい環境ですが、ライフスタイルを柔軟に換えられる人ばかりではありません。
1,早急に行われた個人への救済
マレーシア財務省は、新型コロナウイルス抑え込みのための活動制限令下で市民生活を支援するため、中低所得世帯に一時金を給付する「国民支援計画(BPN)」を実施することを3月中に発表しました。
オンラインでの申請方法もわかりやすく説明され、マレーシアIDを持っている個人を対象に、4月26日までに326万件の申請を受けました。
給付は所得下位40%、所得中位40%の層に属する世帯向けで、5月4日から給付が開始され、4月17日以降、770万人に対し、総額54億7,000万リンギ(約1,390億円)が給付されています。
また、ほとんどの乗客を一時失ってしまった国内のGrabやMyCarの約500人の運転手にも、一時金500リンギットの現金を支給しました。
フルタイムのドライバーの収入が月に約2500リンギットから5000リンギットですので僅かの足しですが、急に路頭に迷う事にはならずに済んだようです。
2,中小企業への対策と給与の肩代わり
今回マレーシア政府は、3度にわたって景気刺激策を打ち出しています。
- 2月27日 企業の資金繰りへの対応(特に観光産業)、個人への支援
- 3月27日 低/中所得者向け一時金支援、医療機器の調達、中小企業向け金融支援
- 4月 6日 中小企業向け給与補助金の拡充、零細企業への一時金支給
2,500億リンギ規模の景気刺激策パッケージに追加し、活動制限令で操業できない中小企業向けの総額100億リンギの支援策を発表。
月給4,000リンギ以下の従業員を雇用する企業に対し、従業員が75人以下の場合で1人当たり月額1,200リンギ、同76~200人で800リンギ、201人以上で600リンギを支給。
また、3カ月にわたり、1社当たり最大200人までの給料を肩代わりするとしました。
4月9日から受け付けを開始し、4月19日時点で15万9,000社から従業員約100万人分の申請があり、計12億リンギ(約294億円)を4月半ばから支給し始めました。
中央銀行も、中小企業や個人の融資返済を条件付きで返済期間を半年引き延ばす策を出しています。感染者の多いスランゴール州の政府は、3月23日には活動制限令で経済的影響を受ける住民や企業に対し、計1億2,778万リンギ(約32億円)を交付することを発表。
約8万人の認可小売業者に対する損失補塡や賃料免除、業者の資金援助を行っています。
このほか、約6,000人の医療従事者に200リンギと食糧を支給(拠出額は120万リンギ)、購入選択権付の賃貸住宅2,700戸の家賃支払い3カ月延期措置(拠出額60万リンギ)、スランゴール州出身で東マレーシアの大学に在籍する学生約2,500人に200リンギが支給(拠出額230万リンギ)されました。
3, 4日でできた400床の仮設病院
クアラルンプールから行政機関の中心地プトラジャヤへ南下する途中に、国内最大のコンベンションセンターMalaysia Agro Exposition Park Sedang (MAEPS)があります。
4月4日までに国内90カ所に409センター、40,000人分の隔離施設を作り上げるという異例の対応力を見せたマレーシアですが、このMAEPSはその中でも決定から4日間というスピードで仮設施設を作り上げました。
使用されたのはホールAとC。
広さ13,200㎡、東京ドームのグラウンド部分に値します。
3月24日に国防省からの依頼を受け、翌日には首相の決定が下りました。
イベントの設置には慣れているコンベンションセンターも、仮設病院は初めて。
しかも活動規制中で警察の許可がないと開けられない業者や道路も多くあり、政府、警察、設備業者、医療関係、清掃関係、防御服のボランティアまで総出の協力が必要でした。
26日に設計が始まり、29日までにホールAの400床が完成しました。
テレコムマレーシアによる無料wifiも提供されています。
4,活動制限中に見えた国民の姿勢
今回の約半年にも近い活動制限の中で感じたことは、有事の時に発揮されるこの国の決断と行動がとても速く、団結力があるということでした。
普段ゆったりしているわりに、イベント事に関する行動は迅速なことはよくあるのですが、3月の自主待機に始まり、大きな苦情が出ることもなく、政府からも状況詳細や次の指針が定期的に発表されるので、何をしたら良いのかが分かりやすいのかもしれません。
6月以降、影響を大きく受ける企業が増えてくるため、生活の中では治安にも注意が必要です。
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